ざいつ循環器・内科が取材を受けました。
福岡市城南区の国道263号線沿い、星の原団地入口交差点すぐ近くに平成20年2月に開業した内科「ざいつ循環器・内科」。(現在は早良区飯倉7-29-15に移転しています)
循環器疾患専門というバックボーンを持ちつつ、内科全般の診療を行っているため、高血圧を始めとした生活習慣病や動悸・息切れなどのお悩みまで、幅広い対応を可能としている。物腰が非常に柔らかい雰囲気でありつつも、確固たる熱い信念が伝わってくる。そんな戝津龍二院長にお話を伺った。
幼少のころはどんな少年でしたでしょうか?
熊本で生まれ育ちました。典型的な田舎の少年でしたね。(笑)テレビゲームなどもなく、朝7時には起き、7時半には登校する。そんな生活でした。勉強はむしろ出来ないほうで、決して、優等生とは言えませんでしたね。例えば、九九(かけ算数)を覚えることも、クラスでは一番遅かったと思います。
それは正直意外ですね。しかし、そこから福岡大学医学部に進学し、そして医師になられたということで、そのあたりの経緯がとても気になるのですが?
はい。当時、東京に住んでいた兄が、帰省時のお土産にブラックジャックの単行本をくれたんです。それを読むのが本当に楽しくて。でもその時は、あくまで読み物として楽しいだけであって、それがたまたま医療ネタの漫画だった。正直、そんな感じでした。自分の職業として意識しはじめたのは高校時代です。大学受験を控え、「どこの大学を受けよう?」「どんな学部を受けよう?」と考えだすと、当然、その先にある職業観に思いを巡らせ始めますよね?
その時に心の根底にあったことが一つ。それは、「人の役に立ちたい。」ということでした。それを何よりの判断基準にして、(こう言うと語弊があるかも知れませんが)いわば消去法的に残ったのが医学部という学部でした。例えば、当時、バイオという分野が非常にもてはやされつつありました。少し興味はありましたが、自分の中で「人の役に立つ」というイメージに直結できませんでした。直接的に「人の役に立つ」という点において、やはり医学に勝るものは無いという思いに至ったのです。そう考えると、ブラックジャックの本を読んでいた思い出は、医学の道に進むきっかけというよりは、むしろ最後に後押しする役割を果たしてくれたなぁと感じています。
お父様が開業医とお聞きしましたが?
はい、そうです。そう聞くと大抵、皆さん、「父の姿を見て医学の道に…」と思われるのですが、先ほど述べたような経緯が実際のところです。父を意識しだしたというか、同じ医師としての影響を受け始めたのは、父と同じく開業医として独立してからだと思います。同じ医師でも、勤務医と開業医というのは、そのスタンスが大きく異なります。勤務医、特に大学病院の場合は、良くも悪くも「個」を消して組織の歯車的に動かなければなりません。自分の思いや考えをしっかり行動に結びつけるには、組織の上に立つ必要があると痛感しました。そして、それを実現するために開業医という道を選びました。そこで大きくスタンスが変わり、これまでとは勝手が違ってくる・・・。そんな状況の中、同じ開業医の父の存在が大きくなっていったのだと思います。
参考にすべき対象が身近にいたのは大きいですね。
本当にそう思います。「こんなときはこうするべき」「そんなときはこう考えるべき」といった具合に、非常に具体的なノウハウや心得を教えてもらうことができました。
そしてそれらは、大学病院時代には知り得ない、地域に根差した町医者になるための現場主義のハウツーばかりです。
開業医としての日々はどのようなものですか?
やはり忙しい日々です。勤務医と違って、自分の都合で自由に休みを取ることは難しいですね。でも、週に4日は当直といったような、大学病院の心臓血管外科時代のハードな状況を経験した自分にとっては、ほとんど苦にならないです。あの頃があったからこそ、今の開業医としての日々をしっかりとこなせていると思います。ちなみに、医師としての生活がまさにライフワークである現状において、何か趣味に打ち込むことは難しいですが、そもそも、あまりそういう欲求は持っていません。まとまった時間が必要な趣味や、遠方に行く必要のある趣味などを持ってしまうと、緊急の時などに支障をきたしてしまいますしね。まだ小さな我が子と遊ぶ時間や、片道数キロを愛車のMINIでドライブ通勤する時間、ちょっとした空き時間でのフェイスブックの時間…今は、そういう時間がとれているだけで十分満足です。
内科では珍しく、20時(火・金)まで診療されていますね。
はい。地域に根差した町医者のあるべき姿を考えた時、従来の、どちらかと言うと病院側の都合で設定された診療時間帯ではいけないと感じました。日中に時間がとれない方や、仕事帰りに診療を受けたい方も受けやすい。また、継続的に受診されている方で、薬が切れて困ったという時にも通いやすい。そんな診療時間を実現するために、今のような時間帯に設定しています。加えて、実は、時間外の電話は携帯電話に転送しているんですよ。勿論、必ずいつでも電話に出られるわけではないですが、その場合は留守電設定にして折り返し掛けるようにしています。朝早い時間帯や夜遅い時間等に、どうしても困った状況に陥った患者さんがいれば、いつでも相談してほしいという思いでそのようにしています。正直なところ、私もそのほうが楽なのです。というのも、診療時間外だからとガマンしたり、諦めたりしている患者さんがいるであろうことを想像しながら時間を過ごすことのほうが、私にとっては、よっぽど苦痛だからです。繰り返しになりますが、大学病院時代のハードな状況に比べれば、そもそもこのような診療時間や携帯電話対応なんて、全く苦ではありませんしね。
話が少し変わりますが、拝見するに内装が医院らしくなく、こだわりを感じますが?
そうですね。かなり色々とこだわりました。施工業者さんは苦労したと思います。(笑)内装は低ホルムアルデヒドの建築資材を使用しています。待合室の天井、壁、床には無垢の木材を用い、自然の植物油をベースにした塗料を使っています。診察室の壁には漆喰塗装を施しています。漆喰の作用で空気中の有毒なガスが吸収排除され、室内の湿度も適当に調節されますので、快適な環境となっています。実は、私自身、花粉症のアレルギーがあるのですが、院内にいる限りは症状がほとんど出ず、身をもって当院の内装の効果を実感しているんです。
普段心がけていることや治療方針について教えていただけますか?
とにかく、患者さんの思っていることをしっかり聞くということです。「何が言いたいんだろう?」「何に困っているんだろう?」それを正確に見出すには、とにかくしっかり聞くこと、これに尽きると思います。場合によっては、患者さん自身が気付いていないことが原因であることだってあります。その場合でも、結局は色々としっかり聞いて、こちらから投げかけもしながら、原因やその解決方法を見出すことができるというものです。
最後に、今後目指す方向性についてお聞かせください。
開業医として一番重要なことは、患者さんに信頼されることです。しっかりした信頼関係が構築されていなければ、互いの理解を深めることは難しいです。
また、自分の専門分野・得意分野の診療体制を整えていることは言うまでもありませんが、決して、専門外については対応できませんというスタンスではありません。
そのような時は、おすすめの先生をすぐに紹介できるよう、横の繋がりも大切にしています。と言いますか、そもそも、町医者のあるべき姿は元来そうだったはずですよね?その地域の患者さんの抱える様々な症状を、とにかくまずは聞いて、時には横の繋がりも活かしつつ、ベストな解決方法を患者さんに提案する。そんな、何でも相談できる町医者が私の理想像です。そしてそれが患者さんにとっても、満足度の高い町医者なのではないでしょうか?それと、具体的な取り組みを一つ上げるとすれば、在宅医療(訪問診療)ですね。今来られている患者さんも1年毎に年をとられていくわけです。「動けなくなったらどうしたらいいんだろう?」そんな不安に応えるべく、在宅医療のシステム化をさらに進めていきたいと考えています。